平成7年、就職したときに、同期の女性が自治体が募集した男女共同参画を推進するグループに参加しており、その団体が開催した選択的夫婦別姓関するシンポジウムに参加しました。
そのころ、法務省はHPによると「法務省においては、平成3年から法制審議会民法部会(身分法小委員会)において、婚姻制度等の見直し審議を行い、平成8年2月に、法制審議会が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申しました。同要綱においては、選択的夫婦別氏制度の導入が提言されています。この答申を受け、法務省においては、平成8年及び平成22年にそれぞれ改正法案を準備しましたが、国民各層に様々な意見があること等から、いずれも国会に提出するには至りませんでした。」とあります。
それから、約30年がたち、女性の社会進出も進みましたが、いまだに選択的夫婦別姓は実現していません。職場等における旧姓の通称使用は普及したものの、約95%の夫婦が婚姻時に「夫の姓」選択し、夫婦、家族は同じ姓を名乗るのが当たり前という価値観も根強いものがあります。
令和6年6月18日、一般社団法人 日本経済団体連合会は「選択肢のある社会の実現を目指して~女性活躍に対する制度の壁を乗り越える~」という提言を発表しました。夫婦の姓を取り巻く社会環境の変化、「選択的夫婦別姓制度」をめぐる政府・司法の動き、旧姓の通称使用の拡大と課題、政府への要望がまとめられています。
ビジネスの現場においても、女性活躍が進めば進むほど通称使用による弊害が顕在化するようになったとあり、旧姓の通称使用によるトラブルの事例として次の様なものがあげられています。
〇多くの金融機関では、ビジネスネームで口座をつくることや、クレジットカードを作ることができない。
〇クレジットカードの名義が戸籍姓の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓にあわせざるを得ない。
〇通称では不動産登記ができない。
〇契約書のサインもビジネスネームでは認められないことがある。
〇役員就任時の法人登記の際、旧姓の併記は可能ではあるが、旧姓を証明するために戸籍抄本が必要である。
また、「歴史的に継承されている姓や、稀少性の高い姓など、姓にこだわりのある方は、男女とも婚姻による変更は悩むところ」であるとの記載があります。
政府与党自民党内でも経団連の提言発表後、制度の導入に賛成する立場の議員と、慎重な立場の議員がそれぞれ議員連盟の会合を開くなど、動きが活発になっています。現在休眠状態となっている党の作業チームでの議論を再開させるという報道がありました。
今後、性別や国籍、年齢等にかかわらず、多様な人財の持つ様々な価値観や考え方を受容し、全ての人が活躍できる環境整備が必要です。宗像市でも女性の活躍推進は毎年、施政方針で取り組まれており、この選択的夫婦別姓制度はその一助となると考えます。また、未来を担う子どもたちが、意に反して自身の名前を変えることのない社会を作るのが、私たちの責務であると考えます。
「家族内で姓がバラバラだと家族の一体感失われる」という意見もありますが、「サザエさん一家」を見て、「磯野とフグ田と二つの姓があるから、家族の一体感がない」と感じる方がいらっしゃいますでしょうか?家族の一体感というのは単に姓が同じだからはぐくまれるというものではないと思います。
とはいえ、この選択的夫婦別姓制度が導入されたとしても、従来通り多くの夫婦が同姓になることを選ぶかと思います。その方々の価値観はまた同様に十分に尊重されなければならないと思います。日本人女性が国際結婚をされた場合は、そのまま戸籍上も夫婦別姓を選択することも可能ですが、届出をして戸籍上の姓を夫の外国姓に変更する方も多くいらしゃいます。また、離婚して母親が親権をとって子どもと同居する場合も、家庭裁判所の許可を得て、子どもの姓を母親の旧姓に変えることも多いと思います。このあたりも「家族は一緒の姓であるべき」という価値観の強さを感じるものです。
1979年国際児童年の協賛歌であるゴダイゴのビューティフル・ネームという歌があります。小学生だった私はその歌が大好きだったのですが、そのなかに次の歌詞があります。
名前 それは燃える生命(いのち)
ひとつの地球にひとりずつひとつ
Every child has a beautiful name
A beautiful name, a beautiful name
呼びかけよう名前を すばらしい名前を
(ゴダイゴ『ビューティフル・ネーム』歌詞より引用)
自分が生まれ育った名前をずっと使い続けたいというのは、当たり前の感覚だと思います。制度自体は平等とは言え、多くは女性のみがその姓を変えなければいけない葛藤と向き合っている現状だと考えます。
宗像市議会令和6年6月議会にて「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」が提出されます。自分は会派を代表して賛成の立場で討論をする予定です。
※意見書案第1号「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書の提出について」は賛成多数で可決されました。