約20年あまりの公務員生活の中で心に深く残っている出来事があります。
前職の勤務先では様々な部署を経験させてもらいました。業務の基本としては、上部機関の担当課から指示がおりてきますので、それに沿って行うことが原則となります。その中で、様々な工夫をしつつ、効率的な仕事のやり方ということを意識していました。
退職する数年前、庶務課の担当係長として、非常勤職員の皆さんの人事・労務に関する業務を行っていました。雇用保険・社会保険等の手続き、出勤管理、年次有給休暇の管理等です。
ある日、源泉徴収される所得税が妙に多いことがわかりました。このあたりの業務は基本的には前年度を踏襲していれば問題ないはずなのですが…。よくよく調べてみると源泉徴収に関する書類を提出してもらっていないことがわかり、高い税額表が適用されてました。年末調整も行っておらず、本人が確定申告をすれば最終的に調整されるとはいえ、毎月数万高い所得税を控除され、確定申告の負担もあるのはおかしなことです。
すぐに上部機関に確認をしたところ、「その問題は認識しているが、現在すぐに是正できる体制ではない」というものでした。「いや、体制がどうのこうのという問題ではなく、するべきことはしないといけないのでは?」と押し問答になりました。最終的にはその問題はその年度で解消されることになったのですが…。
その時に強く感じたことは「自分たちの組織は働く人たちのために日々業務を行っているはずである。自分のところの立場の弱い非常勤職員の方々のことさえしっかりと出来ない組織に意味があるのか?」ということでした。
憤りというものは行動のエネルギーになります。本来であれば決められた手順で決められたとおりに業務を行いますが、この時ばかりはこの状況を改善するためにどのような手段がとれるのか、そういったことをいろいろ考えて行動していました。上部機関も余裕のないギリギリの体制のなかで、現状を大きく変えることの判断が出来なかったのだと思います。
その年の年末調整業務は結構大変な思いもしましたが、とても充実感を感じたことが印象に残っています。